大半の税理士事務所の料金体系は、顧問料を毎月支払い、これとは別に決算申告時に決算申告料を支払うという形態になっています。
これから会社を経営しようとされている方は、
● 結局のところ顧問料って何なんだろうか?
● 何を顧問してくれるんだろうか?
● 月数万円もの固定費を支払う余裕はないんだけど。。。
という疑問をお持ちかもしれません。
先輩経営者から、「うちの税理士は、たまに来ては小一時間程度帳簿を見て、終わったらさっさと帰る、、、」という話を聞かされた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、いざ会社を経営してみると、事務廻りの面倒な業務が発生するのも事実ですよね。
我々税理士は、日々の記帳や決算申告の品質を適正なものにし、更に節税の余地がないかを検討し、ご依頼があれば税務相談に応じ、ご依頼がなくとも必要に応じて税務廻りのアドバイスを行うことを生業としています。
税理士の業務は、商品の仕入がなく知識を切り売りする商売なので、「作業サービス業」と考えると分かりやすいかもしれませんね。
そう、税理士顧問料は、これらのサービスを提供するための作業料なのです。
税理士事務所は、一般的に顧客数の増加に比例して事務量が増すため、その経費の多くは人件費で構成されます。
従って、税理士の顧問料を時間給という観点で考えると、より理解が進むかもしれません。
例えば、ある税理士事務所が年収450万円の正社員を雇用した場合、社会保険料を含めて年間500万円強の人件費が発生します。
この正社員がお客様を担当した場合、最低でも一日2万円(500万円÷12か月÷22日)を稼いでもらう必要があります。
この例でいくと、仮に月額顧問料1万円のお客様がいらっしゃる場合、この正社員がそのお客様にサービスを提供できる時間は、1か月あたり4時間(1万円÷2万円×8時間)となります。
この、月4時間の範囲内で、お客様とお会いしてお話をお伺いし、記帳の品質を適正なものにし、更に節税の余地がないかを検討し、ご依頼があれば税務相談に応じ、必要に応じて税務廻りのアドバイスを行います。
当然ながら、これ以上の時間を提供した場合は採算割れとなります(実際には4時間でこれだけのサービスを提供することは難しいので、通常は様々な効率化を図っています)。
税理士事務所目線から顧問料を解説すると、上記の通りとなります。
もっとも、採算ばかりを気にして、お客様にご満足いただけるサービスを提供せずにいると税理士の存在意義が問われることとなりかねません。
例え話として、なんとなく税理士の顧問料についてご理解いただけたら幸いです。
顧問料とはいったい何なのかを説明してきましたが、その顧問料が高いか安いかは、また別のお話となります。
過去に、税理士法の定めによる税理士報酬規定というものが存在しましたが、平成13年の法改正で廃止され、現在は各税理士が自由意思の下で顧問料を定めています。
堤税理士事務所では、お客様の売上高に応じた料金体系としています。
当事務所に限らず、多くの税理士事務所が売上高基準を採用しています。
これは、お客様の売上高が大きくなるほど経理の事務負担も増えるだろうから、これに比例して税理士の作業量も増えていくだろうという、税理士業界のなんとなくの経験則によるものと思います。
実際には、売上高が大きくとも経理負担がさほどでもない業種(不動産投資など)、小規模でも経理が煩雑な業種(店舗が複数あるケースやNPO法人など)があります。
さらに、たとえ同業種であっても、日々扱う会計資料や事務員さんの習熟度は会社ごとに違うはずです。
お互いに納得のいく顧問料を定めようと思えば、本来は半年から一年程度、その会社の経理廻りをじっくり観察した方がよいのですが、それでは一向に料金が決まらないので、お客様も税理士もモヤモヤすることでしょう。
あまり細かいことを考えずざっくりと料金を決められるという点で、売上高という指標を用いるのは便利です。
繰り返しになりますが、税理士事務所の経費の多くは人件費です。
従って、職員を採用した場合は職員の人件費を意識し、採算割れとならないような顧問料を設定せざるを得ません。
まして、大手の税理士事務所ともなると、優秀な人材を確保するために高い人件費を確保する必要があります。
一方で、堤税理士事務所のように佐賀の地方都市で正社員を雇わずコンパクトに営む場合は、さほど料金を高くする必要はありません。
小売業などは、会社を大きくすることで仕入コストを抑え、小売価格を抑えることができます。
逆に税理士という業種は、規模をコンパクトにとどめることで、顧問料を安く設定できる可能性があります。
税理士業界で寡占化があまり進まない理由の一つは、この点にあるのかもしれません。